#1 friend
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P.N.G./interFJ ペルソナノングラータ インターエフジェー
◆第一話「仲間」◆
分厚いコンクリートの壁で固められた
その空間は不思議と自分を遠くへ連れ出してくれた。
今思えば薬を投与されていたのかも知れない・・・
「被告人パロネラに確認する。所属と階級を言いなさい。」
「#117153・・・」
弁護団と裁判員の呆れ顔など見なくても分かったし、
そんなことに興味は無い。
俺が今夢中なのは高い位置にある小さな窓から
灰色の空に浮ぶ雲を眺めることだった。
唯一俺はその一点に気持ちを集中していた。
雲の中の開けた場所でだた、あの日の事を思い出していた。
白い光に包まれた体は、
皮膚がじりじりと焼ける感じだった。
2017年8月7日、
あの日は、うだる様な暑さだった。
容赦なく細胞を焦がす紫外線の炎から逃れるように
俺は兵員輸送車の狭く暗いハッチの中に潜り込んでいた。
汗と硝煙の匂いが混じった重い空気が立ち込める。
「戦争は終わった。 戦いは終わったんだ。」
誰かが確認するように呟いている。
皆、疲れきっていた。
顔を上げてもけして誰とも視線が合うことも無く、
ただ、ただ、焦点の合わない目で床の一点だけを見続け、
みな思い耽っていた。
故郷のことか?それとも、殺した奴の顔でも思い出していたのだろうか?
今ならそれも俺には分かる気がする。
だが、この時はまだそんなこと感じることすらできなかったんだ・・・
どちらにしても、この時、俺と同じ事を考えている奴など一人もいなかった筈だ。
あの3人を除いて・・・
「ホーッ、ホーッ」
森の木々の間を縫うように暗闇の向こうから梟の鳴き声がこだまする。
半分かけた月明かりが不気味に俺たちの影を映し出す。
「おいっディンゴ、大丈夫なのかよ?ここ神聖な場所なんだろ?」
巨体のベアが容姿に似合わず怯えていた。
「トロールが出るかもなぁ?」
木造で出来たその建物は朱色に染め上げられている。
この国では【テラ】と呼ぶらしい。教会のようなものなのだろう。
数段しかない階段の上には硬貨を入れる箱があった。
「おいっベア!手貸せ、こいつをひっくり返すぞ」
「やばいって、呪われるって」
ベアは元々アフリカ系で、シャーマンとか結構身近にいるらしく
スピチュアルワークだとか心霊的なことを妙に信仰していた。
「お前は、20世紀の米兵か?それとも玉無しだったのか?
だったら俺が掘ってやるから手じゃなくてケツ貸せ!上官命令だ。」
「くっそーどうなってもしらねーぞ!」
流石は2メートルを超す巨漢だ。容易に箱はひっくり返り
硬貨が飛び出してきた。
「Yenだぞ円!うひょーこれでコモドール買えるか?」
「いや、むりだろ・・・」
ベアの冷静な突込みをよそに俺は両手で硬貨をすくい上げるように
A4サイズほどあるジャケットのポケットいっぱいに押し込んだ。
「流石だ、マサイはパワーが違うな」
「マサイって言うな!アボリジニー!」
「あ、アボリジニーだとっ貴様、俺がいつ土を食った?
そこまで意地汚くないぞ!」
俺らが硬貨を投げ合いじゃれ合っていると突然、後ろに気配を感じ
背中に冷気が走った。
「2人とも死ねばいいのに・・・」
暗闇におかっぱ頭の少女の顔が浮かび上がった。
「で、でたぁー!」
俺とベアはその場に顔を覆ってうずくまった。
・・・どれくら時間がったったのだろうか、俺は化け物の気配が無いことに気がついた。
俺は、トロールに食われるかもしれないのに、
日本兵に掘られるかもしれないのに、
勇気を出して、恐る恐る、ゆっくりと振り返り、目を開いた。
「わっぁああ!って、へ?」
そこにいたのは、小さな少女だった。
「電球よ・・・」
少女は手に持ったタクティカルライトで自分の顔を
何度かカチカチと照らした。
これが生首の正体だった。
「気配を消して近づくなぁ!」
「特技」
彼女は表情一つ変えずにピースをした。
流石、コマンド部隊出身・・・じゃなくて、
彼女なりの冗談なのだろうが、
きっと、ナイフで殺っちゃうんだろうな・・・。
そう思うとぞっとする。
彼女の名は、通称アリス、由来はあの不思議の国のアリスだ。
その名の通り見た目はまるで少女だが、
実年齢は2・・・やっぱり言うのはやめておこう。
まだ生きていたいからな。そもそも、その年齢も本当なのか?
彼女にはとにかく謎が多い。
その年齢に釣り合わないルックスもそうだが、
髪の毛がピンクということが最大の謎かもしれない。
生え際もピンク・・・毎日染めてるのか?戦場で?
俺なんて髭も下の毛もぼぉぼぉだって言うのに?
女は身だしなみってやつか?
俺の一生分の不思議が彼女には詰まっている。
その上、彼女は特殊部隊所属ときている。
突っ込みどころ満載だが、あえて俺は突っ込まない。
俺の人生経験から言って、大人の事情ってやつに首を突っ込むと
ろくなことにはならない・・・
俺が幼いとき大人の事情に首を突っ込まなければ
きっと両親は・・・俺は何言ってるんだ?・・・
とりあえず、これでチームは揃った。
本当はもう一人いたんだがそいつは死んだ。戦争だから仕方ない。
そいつを抜いて、俺、ディンゴ(犬)。アリス(少女)。そして、
そこでのびてるベア(熊)。
今は3人でチーム、P.N.G.(ピーエヌジー)ってわけだ。

普段は通信でかまない様に略されて呼ばれているが、
正式名称は『ペルソナノングラータ』招かれざる客人と言う意味らしい。
まぁ、その名の通り俺たちは何処へ言っても厄介者さ。
この国にとって俺たちは外の人間、出来ることはそんなに多くない。
まして、たった3人で出来ることなんて・・・賽銭泥棒くらいなものさ・・・。
「うぅぅ・・・日本兵の竹やりがおれのXYZにぃ・・・」
『こいつどんな夢見てうなされてやがるんだ?』と心の中で突っ込みを入れながら
のびきったベアの胴を、硬いブーツのつま先で2、3度小突く。
「おいっ起きろ海坊主!」
途端に目を見開いたベアは目線だけで辺りを見渡すと
跳ね起き上がり、目にも留まらぬ速さでロンダートを決め
体勢を入れ替えると機銃を構えた。
「日本兵は何処だぁ!?貴様日本兵か!?」
ベアが構えるMINIMIの銃口がアリスを向く。
「死ねよ、バカ」
リンゴをかじりながらアリスはこの状況でも余裕の表情だ・・・さすが。
って、ベアの持っているMINIMIの銃口にいつの間にかナイフが刺さっていた。
「ベアが起き上がった一瞬にアリスは胸部に着けられたナイフを取り出し
更にはりんごの皮をウサギちゃんの形に剥いてからナイフを投げ
銃口に刺したのだ。」
「ひぃ・・・日本兵に俺のXYZがぁ・・・」
俺がそんなありえない推測をすると、それを真に受けたベアは
シャーマンお手製の木で出来た妙に手足の長いキモイ人形を取り出して
突き出した。
「ひぃぃぃ!祟りだぁ!座敷わらしの祟りだぁ!」
「そんなわけないだろぉ!だれが座敷わらしだ」
アリスが俺の頬を抓る。
「あのアホ、いつも寝起きが悪い。間違って撃ち殺されたら
あいつと同じになっちまうじゃないか?だから、あらかじめ発砲できないように
しておいた。リンゴはタッパーに入れといたやつだ。」
そういえば朝、アリスが鼻歌交じりでリンゴの皮を剥いていたなぁ〜。
なんて、のほほぉんとしたひと時を思い出していると、さっきの会話でちょっと
引っかかるところがあることに気がついた。
『間違って撃ち殺されたらあいつと同じになっちまうじゃないか?』
「って、あいつ、もう一人の仲間、ええーっと、名前が思いだせん・・・。は、ベアに殺されたのかぁ!?」
俺にとってはあまりにも衝撃的事実だった。
あんまり、クラスでも目立たない奴だったけど・・・。
正直名前も覚えてないけど、
テストの日、消しゴムを忘れた俺に、自分の消しゴムを半分に切って
分けてくれたっけ・・・。そんな、心優しいあいつが、ベアに!
・・・そぅ、殺されたんだ。
そう言えば、確かにあいつが死んだ日、俺が夜中用足しに起きると
隣で寝てる筈のベアの姿は無く。その直後、銃声と共に
あいつの悲鳴が・・・、ベアにはアリバイが無い・・・。
『ジャーン・ジャジャーン・ジャジャジャーン』
俺の中でそれは確信に変わる。
「あいつを殺したのは、そう、ベア、あなたですね!」
俺は人差し指を突き立てベアを鋭い眼光で睨み付けた。
「決まった」
そう思った瞬間、天と地が入れ替わった。
アリスが放ったソバットが見事、俺の首に入り俺は立ち姿のままその場で
2、3回転した。
「何処までが冗談なのかわからなくなって来た。
たのむ、全員この薬で自害してくれ。」
「それだけはご堪忍をハートマン軍曹・・・」
「ここは安全だ、だからドーナツ坊やはとっとと寝ろ!」
そうだ、本来の趣旨を忘れていた。
アリスは俺たちが外貨獲得に勢を出している間、
ここを安全な寝床とするため
半径50メートル圏内に侵入者が来れば音がなるようにトラップを仕掛けて来てくれていたのだ。
この国では屋根のある寝床には不便しなかったが、寝込みを襲われる事はよくあった。
その為、熟睡などここしばらくしていない。
っておいっベアは既に寝袋まで出して寝てやがる!
ちっ俺の名推理を聞き逃したな・・・って本当のところどうなんだ?
気になって寝れないじゃないかぁ・・・。
それでも明日はやってくる・・・。
「寝よ・・・」
「寝れ・・・」
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